サロン経営を始めてからというものずっと直面しているのが、「個性を活かすか、マニュアルを徹底するか」という問題です。
お客様が「このスタッフにまたお願いしたい」と思うのは、技術以上に人柄や接客スタイルから生まれることが多いです。
だからこそ、スタッフの個性を活かした店舗づくりは欠かせません。ところが、それを実現するには逆説的に、細かいルールやマニュアルを用意する必要があります。
挨拶、カウンセリングの流れ、施術後の声かけ──これらを一定の基準で揃えなければ、店舗全体としての安心感が揺らぎます。細かく決めれば決めるほど、スタッフは「考えなくても動ける」一方で、「自分の好きなようにはできない」というジレンマが生まれます。
経営者としては、このバランスが本当に難しい。
個性を尊重すれば現場がバラバラになりやすい。接客や手技について個性を活かすのであれば、自由にしてもらえばいいのです。でもサービスレベルが一定にはならないです。
逆にマニュアルを強めれば温かみが失われていきます。良かれと思ってもお店の方針でこれだけ話してくれということが決まっていれば、自分の個性をだす場はありません。
頭では「最低限の基準を守り、その上で自由度を持たせる」ことが理想だとわかっていても、実際の現場では常に揺れ動きます。はっきりしたボーダーはないからです。
大手サロンになればなるほど、きっちりと手順を定めて教育をします。リラクゼーション業界の大手ではマニュアルに沿って仕事をするというところが多いはずです。余計なことを言わないことで、リスクを減らしていくのです。
美容院のフランチャイズで有名な北原孝彦さんは、接客マニュアルの大切さを説き、「余計なことを言わない価値」を提供すべきとはなしています。
ただ、これは店舗を拡大していくという前提です。一店舗、二店舗でオーナーの目がよく行き届いていて、多少のことはオーナーの力で解決してしまえるのであれば問題はありません。
しかし、拡大すればするほど、オーナーの力ではなく、ルールで働いている人を管理するようになります。
画一的なサービス、同じ接客でないとビジネスの再現性を持たせることはできません。
結局のところ、経営とはこの揺れを受け止め続けることなのかもしれません。マニュアルと個性、その両立の難しさに悩みながらも、今日も試行錯誤を繰り返しています。
