これまで私は業界未経験から、平和島店と河内松原店の2店舗を立ち上げてきました。
新しい店舗を立ち上げ、ようやく落ち着いてきた今、サロン経営と畑に立つ農家の姿が重なります。
土地を耕し、種をまき、水を与え、雑草を抜き、収穫を待つ――その一連の工程こそ、リラクゼーションサロンづくりにそっくりだと感じるからです。
畑づくりが一日で終わらないように、店舗づくりも「開店したら完成」ではありません。むしろそこからが本番。今日は店舗=農作物という視点で、私が大切にしているプロセスを振り返ってみます。
種をまく ― コンセプト設定
種は畑のすべてを決める原点です。サロンでいえば「どんなお客様に、どんな価値を届けたいか」というコンセプト。当店では、フランチャイズでアジアンリゾート空間でのサービスを提供するということに共鳴して、加入・立ち上げを決意しました。
土地=立地条件や競合環境を見極め、土壌改良=スタッフ教育・設備投資を行い、やっと種を落とせます。当店では駅前の立地を選び本部のサポートを得ながら現在の場所でビジネスをするという決定をしています。
焦って種をばらまいても、芽は弱々しくしか育ちません。農作物によって水はけのいい場所、水分が必要な場所、寒暖差が激しいところ、温かいところなどその農作物の特徴にあった場所に種を植える必要があるように、ビジネスでも種を植える場所の選定は必須です。
私も含めてここは焦りがちなのですが、農作物で考えると納得します。
ビジネス毎に最適な土地というものがあります。例えば小学校向けの学習塾であれば、小学校の近くにあったほうがいいでしょうし、大学受験ならターミナル駅の近くが向いているでしょう。
テイクアウト専門店なら、ゴーストレストランとして使うことも考えて3等立地も可能です。リラクゼーションサロンであればどのような立地がいいのか。しかもヴィラというビジネスモデルであればどのような立地がいいのか。それを考える必要があります。
水をやる ― 運営と育成
芽が出たら、日々の水やりが欠かせません。
サロンにおいては、笑顔で気持ちのいい接客、清掃の徹底、技術練習、SNS更新――これらはすべて水やりです。
「昨日と同じ水量でいいや」と油断すると、途端に葉がしおれます。逆に水をやり過ぎれば根腐れし、スタッフが疲弊します。
適量を見極め、天気=売上動向を読み、潤いを保つバランス感覚が経営者の腕の見せどころです。
雑草を抜く ― 課題の芽を摘む
畑が順調に見えても、気づけば雑草が伸びています。
サロンではクレームの兆候やスタッフ間コミュニケーションの摩擦、スタッフの手抜き施術が雑草です。放置すると栄養を奪われ、肝心の作物が育ちません。
ミーティングやセラピストへのヒアリングを通じて小さな違和感を拾い、素早く「草取り」することが、健全な成長を守ります。
収穫する ― ファンを育てる
季節が巡り、実った作物を手に取る瞬間は格別です。
サロンであれば、沢山のファンのお客さまと腕の立つセラピストが両方そろっていることでしょう。売り上げは結果ですから、あくまでその場所にたくさん人が集まっている状態になることが、実った状態です。
収穫はゴールではなく、循環の起点です。
土を休ませる ― 振り返りと改良
豊作のあと、農家は畑を休ませたり、堆肥を入れて土を再生させます。同じようにサロンも、繁忙期が過ぎたら数字を分析。
どんなメニューがよくご予約いただけたのか。
予約が入る時間帯は。
指名が取れるスタッフとそうではないスタッフの違いは何か。
シフトやメニューを見直し、スタッフには余裕がある日程で休暇をとりながら研修をしてもらいます。疲れた土では次の種が根付かないものです。
閑散期において種まき、土づくりが次の成長を担保します。
おわりに
畑仕事には近道がありません。店舗づくりもまた毎日の積み重ねでしか実を結ばないと、私はこの3年間で身をもって学びました。まだまだできていないことばかりです。
ようやくわかったのは、手間暇をかけて何年も育てることしか成功の道はないということです。
天候不順=予測不能なトレンドー例えば新型コロナ禍のようなーに見舞われても、土を信じ、種を信じ、手をかけ続ける――その覚悟があれば、必ず豊かな実りは訪れます。
今日も私たちは畑に立ち、静かに種の成長を見守っています。