オーナーがセラピストで、リラクゼーションサロンを経営していると、どうしても「施術に入りたい」という気持ちが出てきます。もともとこの仕事が好きで始めた方が多いですし、施術はやりがいもありますし、何より自分で売上を作れるという安心感があります。
セラピストをしながらオーナー業務は時間との闘いに
ただ、ここに大きな落とし穴があります。
スタッフが5人、6人、あるいは10人以上と増えてきた段階で、オーナーが現場に入り続けると、経営に使う時間がほとんどなくなってしまいます。
私自身は最初から経営に特化する形で進めていますので、施術という選択肢は最初から頭にないのですが、複数店舗を運営していて実感したのは、これだけやることが増えてくると、施術しながらだとパンクしてしまうだろうな、ということです。
また、つかう頭の部分が違うので、切り替えも大変です。
人が増えてくるとそれまでは自然とできていたケアが意識して時間を作り、仕組み化しないとできなくなってきます。私もスタッフが2~3人のところから10人以上に変化してきていますので、同じ方法ではうまくいきません。
徹底してできることは人に任せる、ということが大切になってきます。
現場の業務は、教育と指示、評価の仕組みを整えれば、スタッフがしっかり回してくれます。むしろ、慣れてくればオーナーがいなくても回る状態を作ることが理想です。
その代わりにオーナーがやるべきことは明確です。
将来の方向性を決めること、採用や資金のことを考えること、そして「どんなサロンにしていくのか」を設計することです。
オーナーの仕事は「考えること」にある
現場を任せることができるようになると、オーナーの役割は一気に変わります。
実際の作業で手を動かすのではなく、ひたすら考える。
これが仕事の中心になります。
例えば、
・何人までスタッフを増やすのか
・新しいメニューはどうするのか
・単価をどこに設定するのか
・どんなお客様に来てほしいのか
こういった大枠の方針は、現場のセラピストには決められません。
ここを曖昧にすると、店舗の方向性はバラバラになってしまいます。
現場で判断できないことが「オーナー、どうしますか?」という形で上がってくることもあります。
「殿、ご判断を!」
みたいな場面が毎日のように発生します。
だからこそ、オーナーは「決める人」であり続ける必要があります。
その際に、判断の軸になるのが「お客様の視点」です。
ここを失った瞬間に、サロンは独りよがりになってしまいます。
プロであるほど、素人感覚が抜けていく
ここで大事になってくるのが、「素人の感覚」です。
セラピストは日々技術を磨き、どんどんプロフェッショナルになっていきます。
それ自体はとても素晴らしいことです。
ただし、プロになればなるほど、
「お客様には見えていない部分」へのこだわりが強くなります。
例えば、細かい手技の違いは、プロにとっては重要でも、お客様には伝わらないことも多いです。
これは良い悪いではなく、事実です。お客様にわからない違いは、ないのと同じです。
騙すというわけではありませんが、わかりやすくないとやっていないのと同じです。つまりお客様の要求するレベルを見極めることが重要です。
この感覚は、プロの視点だけではズレてしまいます。
だからこそ、あえて素人の視点を持ち続けることが必要なのです。
素人視点は、意識して取りにいくもの
理想を言えば、オーナー自身が一人の顧客として、いろいろなサービスを体験し続けることが一番です。
ただ現実は、忙しくてなかなか時間が取れない。
私自身もそこが課題だと感じています。
だからこそ、意識的に時間を作る必要があります。
場合によっては、業務をさらにアウトソーシングしてでも、その時間を確保すべきです。
外に出て、他のサービスを体験し、
「お客様は何に感動するのか」
「何にお金を払っているのか」
これを肌で感じることが、サロンの魅力を引き上げていきます。
また、この視点はオーナーだけでなく、セラピストにも必要です。
自分のこだわりと、お客様の感じ方。
この両方を持てる人が、結果的に選ばれるセラピストになります。
完璧なマニュアルで固めるよりも、
考える余白を残した方が、現場は強くなります。
素人感覚を持つことは、プロであることと矛盾しません。
むしろ、その両方を持っていることこそが、これからのサロン経営において最も重要なバランスだと思います。
