日々サロンを運営していると、「なぜオーナーは何でも知っているのか?」とセラピストさんに驚かれることがよくあります。例えばシステム的なトラブルや、税金・法律といった複雑な手続きについて「オーナーならなんでもわかりますよね?」と尋ねられることが多いんですね。
しかし実際は、オーナーだからといって最初から何でも知っているわけではありません。必要に迫られて、必死に調べているだけなんです。そしてオーナーになると、今までは知らなかったあらゆる知識が急に必要とされる場面がやってきます。
セラピストの立場とはまったく異なるプレッシャーが、そこにはあると感じています。
オーナーは「わかりません」「できません」が許されない
セラピストさんにとっては、わからないことを「わかりません」と言ってオーナーや他のスタッフに尋ねるのはごく自然なことですよね。
でも、オーナーの立場からすると、サロンの運営で発生するさまざまな問題に対して「わかりません」「できません」と答えて済むケースはほとんどありません。
- 法律で定められている手続き:労働基準法や社会保険、その他の関連手続き
- 税金関連:消費税・所得税など、ビジネスを存続させるために必須の知識
- サロン運営のシステムトラブル:予約システムや会計ソフトなど、店舗経営に直結する問題
これらの問題が発生した際に、オーナーが「わかりません」で止まっていては、事業が立ち行かなくなる可能性があります。
だからこそ、時間がかかっても徹底的に調べ上げ、必要とあれば専門家にお金を払ってでも解決策を探るわけです。
オーナーは幅広い知識を“広く浅く、時に深く”学ぶ必要がある
サロンの運営に関わる領域はとても幅が広いです。
- 労務管理(雇用契約、社会保険、給与計算など)
- 税務(消費税や所得税、青色申告など)
- 接客や施術メニュー開発
- マーケティング(SNS運用、ホームページ管理、広告など)
まるでジェネラリストのように、「広く浅く、そして必要に応じて時に深く」知識を得なくてはなりません。しかも短期間で判断を下し続けないといけません。
特に集客の広告費用、セラピストの採用のための広告、研修の投資などは正解かどうかは答えがでないなかで何十万というお金を投資するかをすぐに決めないといけません。迷っている暇はありません。迷っていたら現状維持で売り上げが伸びません。リスクをとって投資をするしかないので。
すべてを自分だけでやるのが難しい場合は、プロに依頼してでも解決に導くというマインドが求められます。
セラピストとオーナーのマインドの違い
- セラピストの視点:施術を軸に、接客やお客様の満足度向上を考える。わからないことがあれば、オーナーや他のスタッフにサポートを求められる。
- オーナーの視点:店舗全体の責任があるので、わからないでは済まされない。何があっても経営を止めるわけにはいかないので、最後まで必死に解決策を探る。
この違いは、やはり当事者意識の差と言えます。サロン全体の行く末が自分の判断一つで左右されるオーナーだからこそ、踏み込む領域も広く、深くなっていくのです。
“オーナーになった気持ち”で働くのは難しい
「オーナーのマインドを持って働けば、誰でも成功する」という意見を耳にすることもありますが、実際には気持ちのスイッチを入れるのはそう簡単ではありません。
- 週休二日や社会保険といった労働環境などお構いなしに、24時間サロンのことを考え続ける精神力
- 事業に失敗したら数百万、場合によっては一千万円以上が吹き飛び、大きな借金が残るという恐怖心
- サロンの売上やスタッフの生活、店舗の未来などの責任を一手に背負うプレッシャー
これらを背負っているオーナーと従業員が同じ立場になることはありえません。オーナーになって初めてわかる世界があるというのが現実です。
まとめ
- セラピストから見ると「オーナーは何でも知っている」と思われがち
- 実際には、オーナーが「わかりません」で済む場面はないため、必死に調べ尽くしている
- サロン運営には、法律や税金、システムトラブルなど多岐にわたる知識が必要
- わからないことはプロに依頼してでも解決するのがオーナーのマインド
- オーナーとセラピストのマインドの違いは、責任範囲と当事者意識の差から生じる
オーナーとセラピスト、それぞれの立場には役割と責任があり、求められるマインドも違います。
どちらが良い悪いではなく、立場によって人の見え方や行動パターンが変わるということを互いに理解し合うことで、サロン全体がスムーズに運営できるようになるのではないでしょうか。