「頑張れ」と言わなくても頑張れる店を作る
最近、自分の仕事がどんどんサロンの現場から離れていっているような気がします。
もちろん、サロンの仕事そのものはだいたい頭に入っています。
でも、今の私が考えていることの多くは、
「どうやったらこの仕組みがうまく動くのか」
「どういうルールにしたら人は自然に動くのか」
「この数字をどう見せたら分かりやすいのか」
そんなことばかりです。
要するに、どんどんバックエンドの仕事に寄っているんですよね。
でも最近、それがオーナーの仕事なんだろうなと思うようになりました。
「頑張ってください」では、なかなか動かない
サロンを経営していると、どうしてもスタッフに、
「もう少し頑張ってほしい」
と思うことがあります。
でも、「頑張ってください」と言って頑張ってもらうという方法は、あまりうまくいかないと思っています。
もちろん、一時的には頑張ってくれるかもしれません。
でも、それをずっと続けるのは難しい。
それよりも、
「そりゃ、この仕組みなら自然と頑張るよね」
という状態を作るほうが大切なんじゃないかと思うんです。
例えば、売上を上げれば給与が上がる。
指名が増えれば自分に返ってくる。
一定の条件を満たせば次のステージに進める。
逆に、何もしなければ何も変わらない。
そういう関係が明確になっていれば、人は自分で考えて動きやすくなります。
オーナーが後ろからずっと「頑張れ、頑張れ」と言い続ける必要がなくなるわけです。
オーナーの仕事は、後ろ側の仕組みを作ること
そう考えると、私の仕事はやはり、サロンの後ろ側を作ることなんだと思います。
価格をどうするか。
勤務制度をどうするか。
給与や歩合をどうするか。
指名をどう評価するか。
休日をどう設計するか。
どういう条件で昇格するのか。
そして、それをどう運用するのか。
一つひとつルールを作って、実際に動かしてみる。
うまくいかなければ変える。
ルールを作る。運用する。改善する。
言葉にすると簡単なんですけど、これが本当に大変です。
FCでも、最後は自分で考えるしかない
私はフランチャイズでサロンを経営しています。
FCにはFCの良さがあって、最初から一定の仕組みがあります。
技術もあります。ブランドもあります。運営の基本形もあります。
だからゼロからすべてを作る必要はありません。
でも、ある程度経営に慣れてくると、そこから先は自分で考えるしかなくなってきます。
地域によってお客様も違います。
採用できる人も違います。
家賃も違えば、競合も違う。
スタッフの構成だって違います。
だから、
「この制度が絶対に正解です」
というものは、たぶんありません。
自分の店を見ながら、
「ここはこうしたほうがいいんじゃないか」
と考えて、決断して、実際にやってみる。
そして結果を見る。
ダメだったらまた変える。
この繰り返しです。
本当にくたびれる作業なんですけど、これはなかなか人には任せられません。
自分の店のことを一番分かっているのは、結局自分だからです。
制度を作っただけでは、まだ半分だった
そして最近、もう一つ気づいたことがあります。
私はこれまで、
「ちゃんとした制度を作ればいい」
と思っていたところがありました。
でも、それだけでは足りないんですよね。
例えば、
「この売上なら歩合が何%です」
という制度を作ったとします。
制度としては完成しています。
でも、それをスタッフが一度説明されただけだったらどうでしょう。
自分が今いくら売り上げているのか。
このペースなら月末にいくらになるのか。
あといくら売り上げれば次の歩合になるのか。
その結果、給与がいくら変わるのか。
そこまで頭の中ですぐ計算できる人は、それほど多くないと思います。
だったら、こちらから見えるようにしてあげたほうがいい。
ここまでやって、初めて制度が本当に動き始めるんじゃないか。
最近そんなことを考えています。
第一段階は「作る」、第二段階は「伝える」
だから今は、仕組み作りにも段階があると思っています。
第一段階は、制度を作ること。
「こうなったら、こうなる」
というルールを明確にする。
でも、それだけでは終わらない。
第二段階は、その制度を本人に理解してもらうこと。
例えば制度を始める前に、
「あなたの場合、このくらいの売上なら、給与はこのくらいになります」
と具体的に伝える。
制度の説明ではなく、自分の場合はどうなるのかまで落とし込むわけです。
さらに、その先があります。
自分の「現在地」が見えるようにする
制度を運用し始めたら、今度は途中経過を見えるようにする。
例えば月の途中で、
「今はこのくらいの売上です」
「今のペースなら月末はこのくらいです」
「あとこれくらいで次のラインです」
ということが分かるようにする。
毎日オーナーが一人ひとりに説明する必要はないと思います。
できれば仕組み化して、数日ごとでもいい。
スタッフが見たいと思ったときに、自分で確認できるようにしておく。
そして月が終わったら、
「結果としてこうなりました」
と分かる。
つまり、
事前に見える。
途中でも見える。
最後に結果が分かる。
ここまで作る。
そうすると、制度が単なる「会社のルール」ではなくなります。
本人にとってのゲームのルールになるんですよね。
「あと少し」が分かれば、人は自分で考える
例えば、次の歩合ラインまであと少しだと分かったとします。
そうしたら、
「もう少し頑張ってみようかな」
「指名をもう少し増やしたいな」
「次回来店につながる接客を意識してみようかな」
と、自分で考えるかもしれません。
そこでオーナーが、
「もっと頑張ってください」
と言う必要はありません。
数字が本人に教えてくれるからです。
私は、これが理想だと思っています。
オーナーが人を動かすのではなく、仕組みが人の行動を自然に後押しする。
そういう店にしたいんですよね。
作るだけでなく「動かす」ところまでが仕組み作り
私は今まで、仕組みについて分かっているつもりでした。
でも今考えると、まだ上っ面だったんだと思います。
制度を作る。
数字を決める。
ルールを書く。
そこまでで「仕組みを作った」と思っていた。
でも本当は違う。
その制度を見た人がどう感じるのか。
自分にもできそうだと思うのか。
やってみようと思えるのか。
今どこにいるのかが分かるのか。
次に何をすればいいのかが分かるのか。
そこまで考えて初めて、仕組みを作ったと言えるのかもしれません。
1年前の自分を見ると、分かっていないことばかりだった
サロンを経営していると、本当に勉強させられます。
勉強しようと思っているというより、勝手に勉強させられるという感じです。
数日に一回くらい、
「ああ、ここがダメだったのか」
「こんなことも分かっていなかったのか」
ということがあります。
1年前の自分を見ると、
「よくこんなことも分からずにやっていたな」
と思うことばかりです。
でも、おそらく1年後の自分は、今の自分を見て同じことを言っていると思います。
経営にはベストな答えがありません。
これで完成、ということもたぶんありません。
だからずっと、
「これでいいのかな」
と考え続ける。
ルールを作る。
動かしてみる。
数字を見る。
人の動きを見る。
そして、また直す。
その繰り返しなんだと思います。
「頑張れ」と言わなくても頑張れる店へ
今、私はちょうど制度をいろいろ変えているところです。
まずは制度そのものをきちんと作る。
そして次は、それをスタッフに分かる形で伝える。
さらに、運用が始まったら、自分の現在地ができるだけ簡単に見えるようにする。
そこまで作り込んで、ようやく一段階、皮がむけるんじゃないかと思っています。
スタッフに「頑張ってください」と言い続ける店ではなく、
自分の現在地と、その先にあるものが分かるから、自然と頑張りたくなる店。
もちろん、それで全員が同じように動くわけではありません。
人間なので、そんな単純なものではないでしょう。
それでも、オーナーができることはあります。
人に頑張ることを求める前に、頑張ることが本人にとって自然で合理的になる環境を作ること。
そのために制度を作り、伝え、見えるようにし、運用して、また改善する。
最近は、そんな後ろ側の仕事こそが、オーナーの大切な仕事なんじゃないかと思っています。
