インフレの時代が続いています。
今の日本では、そして世界的にも、現金を持っているだけでは損をする時代になりました。
物価が上がり、円の価値が下がり続けている。
物価がここ数年で1.5倍から2倍になっています。今後もその流れは変わることはなさそうです。
だから、現金を他の資産に変えておいたほうがいい――というのは、投資の世界ではよく言われることです。
ただ、事業をしている人にとってはそうもいかないのが現実です。
現金が必要な理由
サロンの経営には、どうしても運転資金が必要です。
家賃、人件費、光熱費、仕入れ、広告費。
毎月の出費をまかなうだけでなく、税金の支払い、突発的な修繕費や備品購入など、思いもよらない出費もあります。特に消費税は損していようがドスンと数百万円単位で来るので、しっかりためておかないといけません。
つまり、どんなに「現金を持つのは損」と言われても、手元に現金がなければ経営は回らないです。
これが、投資家と経営者の大きな違いです。
手元資金の安心感は「心の安定」
実は、手元に資金がどれだけあるかは、オーナーの心の安定に直結します。
資金繰りがギリギリのときは、どんなに前向きな人でも心が落ち着かなくなります。
今年(2025年)の初め、大阪で新店舗の立ち上げをしたとき。
開店準備や採用、研修、広告費などで出費が重なり、正直ため息をつく日もありました。
お客様は増えてきて毎月少しずつ状態は良くなっているものの、研修すれども研修すれどもスタッフが定着しない日々。
「あとどれくらい持つだろう」「次の入金はいつだろう」
お金が手元にないと、そんなことばかり考えてしまうのです。
本当はもっといいサロンにするにはどうすればいいか?と前向きな話を考えたいのですが、その心の余裕がなくなります。
それほどまでに、手元資金があるかどうかは経営者のメンタルに影響するものです。
目安は「月商の3か月分」
ひとつの目安として、月商の3か月分は運転資金として確保しておきたいところです。
たとえば月商200万円なら、600万円。
この金額があるだけで、心の余裕がまるで違います。
逆にこのクッションがないと、何か一つのトラブルで一気に資金繰りが苦しくなります。
お金がないと判断も鈍り、冷静さを欠きます。
経営の安定感は、数字以上に「余裕資金」によって支えられています。
投資資金とのバランスを取る
もちろん、すべてを守りに回るのも違います。
事業を伸ばしていくためには、投資資金も必要です。
新しい設備、スタッフ教育・研修、ホットペッパーやリジョブなどの広告出稿、生成AIやツール導入など、将来の成長に向けた資金は使うべきです。
特に人への投資、採用や研修に投資しないとサロンの成長はありません。
ただし、その前にまず「運転資金を守る」。
これがあって初めて、安心して攻められるのです。
経営の鉄則:「守り」と「攻め」の両立
経営には、常にバランスが求められます。
現金を持ちすぎても機会を逃し、投資に偏りすぎると足元を崩す。
だからこそ私は、セラピストたちが日々生み出してくれている売上を、
しっかり蓄えながら、次の成長のために少しずつ投資していく。
焦らず、堅実に、そして長く続くサロンづくりを――
それが、今の時代における「守りながら攻める経営」だと思います。
