サロンを運営していると、セラピストたちは日々技術を磨き、知識を深め、お客様の身体に寄り添った施術を提供できるよう成長していきます。技術が高まるのはとても良いことですが、それにともない専門家の視点が強くなるという一面もあります。
一方、私はあえて「素人であり続ける」ことを大切にしているのです。今回は、その理由とメリットについてお話しします。
セラピストはどんどん“深く専門的”になっていく
セラピストたちは、お客様の体を癒やすため、施術技術を高めたいと考えています。
- 新たな主義(手技)や理論を学び
- より効果的な施術法を追求し
- 専門用語にもどんどん精通していく
その結果、細分化された専門知識を深く理解するようになり、施術の説明や効果のアピールを行う際に専門家目線の言葉が増える傾向があります。
これはセラピストとしての成長の証ですが、素人のお客様からは理解しにくいこともしばしばです。
お客様は“素人”であることが基本
ご来店されるお客様は、リラクゼーションやリフレッシュを求めている方が大半で、専門用語や主義の細かい説明をそこまで求めていない場合が多いものです。
- 「肩や腰が楽になればいいな」
- 「とにかくリラックスしたい」
- 「むくみが取れてスッキリしたら嬉しい」
これが一般的な感覚で、施術の詳しい理論や効果のメカニズムを延々と聞きたいわけではありません。“治る/楽になる”という体感こそが重要視されます。
オーナーは、あえて“素人である”視点を選ぶ
私自身、サロンの経営に携わる中で技術的な知識を学ぶ機会はもちろんありますが、あえて素人としての視点を維持するようにしています。
- お客様がサロンを利用するときの“わからなさ”や“戸惑い”を実感としてイメージできる
- 施術メニューやキャンペーンを企画するときに、お客様の“これが知りたい/こう感じる”を重視する
- セラピストとの会話の中で、「それは専門用語で分かりにくくなっていない?」と気づける
技術を深く理解しながら素人視点を同時に持つのは、正直とても難しいです。
中途半端に知識をもっても、現場のセラピストから見るとうっとうしいです。上司がよくわかっていないくせに口出しだけしてくるー社会人あるあるです。
だからこそ、私は専門家になるより“素人であり続ける”道を選んだと言っても過言ではありません。
素人視点のメリット
- お客様との距離感が近い
専門用語や理論に偏らない説明を心がけることで、お客様が「このサロンはわかりやすい」「話をしやすい」と感じるようになる。 - 施術メニュー・サービスを俯瞰できる
専門的な技術の違いを深堀りしすぎず、**“これは本当にお客様に必要か?”**という視点でサービスを見直せる。 - 他の仕事に集中できる
施術者として現場に入らないぶん、経営やマーケティング、スタッフマネジメントといった“経営者本来の役割”に専念できる。 - セラピストの“専門家視点”をサポートする
セラピストが専門的な視点で施術を追求する一方、オーナーが素人目線でフィードバックすることで、よりわかりやすい説明や接客が可能になる。
“オーナーは素人”、だからこそサロンはうまく回る
セラピストが専門家としての高い技術・深い知識を磨くのは素晴らしいことです。しかし、その分野に詳しくないお客様や初来店のお客様の気持ちを忘れてはいけません。
専門家ゆえに当たり前だと思うことが、実は素人にはさっぱりわからないことだったりします。
私が思うのは、オーナーこそ「常にお客様の“わからない”を代表する存在」であるべき、ということです。
素人のままでいるからこそ、“本当にお客様が求めているのは何か”を見失わず、サロン経営に必要な経営・マネジメント・マーケティングなどを充実させられると考えます。