サロンを立ち上げた当初、私はとにかく「軌道に乗せること」に必死でした。赤字をなるべく黒字に転換することで精いっぱいです。
目の前のお客様に来てもらうにはどうしたらいいか?スタッフは集まるだろうか?広告は効果があるか?全てが手探りで、一日一日をなんとか回していくことに集中する日々でした。
ありがたいことに、時間の経過とともに徐々にお店は安定していき、流れが見えてくるようになります。「この時間帯は集客が難しい」「このメニューが人気がある」「このスタッフの対応は指名が増える」など、数字や手応えから次の手が打てるようになります。
そして次に考えるのは、「もっと良くするにはどうすればいいか?」ということ。
売上を増やしたい。セラピストの求人をもっと効果的にしたい。リピーターを増やすために何ができるか?……そんな風に”前へ進めるための施策”を考えるようになるわけです。
当たり前のことを続ける
ただ、そうした「攻めの思考」に偏りすぎると、つい忘れてしまいがちなことがあります。
それは、「当たり前のことを、当たり前にやる」という姿勢です。
新規集客も、求人ももちろん大切です。しかし、今いるお客様、今いるスタッフへのケアこそ、サロンの土台を支えるもの。どれだけ広告に力を入れても、来ていただいたお客様が「なんか落ち着かないな」と思ってしまえば、それはもう次にはつながりません。
施術のクオリティを高めるのは当然として、それ以前に「不快を取り除くこと」を意識する。
これが、オーナーとしてとても大切な視点だと感じています。
例えば、以下のようなことが挙げられます。
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お客様向け
・着替えの服が小さすぎないか?サイズを複数用意しているか?
・メイク直しのアメニティは揃っているか?綿棒やヘアゴムはあるか?
・トイレの備品は清潔か?ペーパーが十分にあるか?匂いは不快でないか?
・お部屋の温度や香りは不快に感じるレベルではないか? -
スタッフ向け
・施術に使う備品が古くなっていないか?不足していないか?
・意見を言いやすい空気はあるか?「こうしたい」という声に、すぐに耳を傾けられているか?
・手間がかかる業務が放置されていないか?現場にとって「地味にストレス」なことは解消できているか?
これらは、決して特別なことではありません。誰でも気をつければできることばかりです。だからこそ、サボりがちでもあります。
でも、この「小さな不快」を放置すると、やがてそれは“気づかれない不満”として蓄積されていくのです。
「気持ちいい空間を作ること」がサロンの使命だとすれば、まずやるべきことは「不快をひとつひとつ取り除くこと」。特別な施策やキャンペーンももちろん必要ですが、それ以上に「継続できる、当たり前の心配り」を徹底することが、長く愛されるサロンを作る第一歩だと思っています。
サロンを立ち上げて3年。ようやく視野が広がった今、改めて「不快を取り除く」という地道で当たり前な作業を、私は大切にしています。
地味で目立たないけれど、お客様やスタッフの「なんとなく心地よい」「また来たい」「働きやすい」といった空気感は、こうした積み重ねから生まれるものだから。
今日も、お店のスタッフに聞いています。足りない備品、ありませんか?
オーナーとして、まだまだやるべき“小さなこと”は山ほどあります。